石蓋には扁平な自然石の周縁部を加工しただけの平面不整方形、断面凸レンズ状・台形状のものがある。全面加工した平面円形、断面鍋蓋状・凸レンズ状・盤状のものがある。ナプのワトゥノンコの石蓋NA1上面に線刻がある。最大のものはベソアのタドゥラコの北にある石蓋BE2である。形は平面不整方形、断面台形状である。外面はゴルフ球のような凹凸と線が彫られている。大きさは長径約2.7m・短径約1.2m・厚さ約0.4mである 石蓋は当初舟型の石棺と同じように平面不整方形であったが、円筒型の石棺と同じ平面円形になり、さらに石棺から土器棺になり小型化していく変遷が考えられる。
石蓋側面に顔が彫られたものがある。 石蓋BA14の顔の輪郭・眼・鼻・口が表現され、また髭又は牙又は鼻輪と考えられる表現が見られる。石蓋BA8にはこめかみの上に線が左右に見られ、角が彫られ、水牛の顔を表現したものと考えることもできる。石蓋BA14の顔には口が表現されているが、石蓋BA8、BA4には口がない。さらに石蓋BA4には眼もないことから、石蓋は、BA14、BA8、BA4の順で変遷したと考えられる。
石蓋には鍋蓋状のものがあり、摘み部分の高いもの(石蓋BE15)と、低く外周に段がつく(石蓋BA2)がある。石蓋BE15からBA2に変遷したと考えられる。石蓋BA2は摘み部分の中心に約2~3㎝の窪みが一つ見られ、割り付ける際の基準点と考えられる。
石蓋には上面に動物(猿)が彫られているものもある。石蓋BA18は整形が粗雑で、不整方形をし、動物像が浅く浮き彫られているのに対し、石蓋BA11、12は深く浮き彫られ背骨から尻尾まで表現されている。石蓋BA12は平面円形・断面鍋蓋状の蓋と動物の装飾が付いた蓋の二つの特徴を合わさったものであり、新しい形と考えられる。ゆえに石蓋BA18、石蓋BA11、石蓋BA12の順に変遷したと考えられる。 石造物の整形および浮彫の観察から、当初の石造物外面整形は粗雑であり、浮き彫りが浅く、描線による表現が主体でしたが、変遷するにつれ細かく磨かれ造形的な表現が見られる。細かく磨かれ造形的な表現が可能になったことの原因の一つとして加工道具の変化が考えられる。加工道具は石器主体のものから金属期が使用されたことによると考えられる。
石造物からこの地域の人々の生活の一端を窺い知ることができる。人々は川や湖周辺の丘陵や山裾付近の小高い所に居住し、石の柱の建物に住み、水牛を使い農耕を行っていたと考えられる。人が亡くなると亡くなった人を崇拝し丁寧に棺に納めたようである。 ページの最上部へ